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Gear & Tech

 

70年という長い年月の間に存在感を増していき、その間にあらゆるジャンルのポピュラーミュージックでのヒット作の誕生に貢献し、今日、間違いなくかつてないほどにラヴコールを送られているツールというと、それはどれだけクリエイティヴなツールなのでしょうか?長年の栄光に輝くGibson P-90 pickupのストーリーをお届けします!

 

Born in the Jazz Age, Made to Rock

ギブソン社の長きにわたるイノヴェーション・技術革新の歴史と歩調を合わせながら、ギブソン社はいままで常に自社開発のピックアップを設計し製造してきました。それらの多くは伝説的な価値を帯びています。エレクトリックギター製造の黎明期、第二次世界大戦勃発前の数年間の間に、ギブソン社は初めて1930年代型のブレード状のピックアップを開発し生産していました。それは、当時カリスマ的な人気を誇ったジャズギタリストのチャーリー・クリスチャンによる使用により“Charlie Christian pickup”として知られていました。その後、幾度にもわたるデザイン改良を経て、今日我々が馴染みのある、全時代を通して多くのプレイヤーからもっとも愛されているファットなシングルコイル・ピックアップへと発展していきました。その後、第二次世界大戦後にギブソン社の生産が再び加速しだすと、1946年時点でそのピックアップのデザインは今日馴染みのある形状へと改良され、47年の時点で、今日我々が手にしているものと同様のデザインをもつP90ピックアップとして通常生産ベースに乗っていったのです。

1940年代後半と50年代にはジャズとカントリーのアーティスト、50年代と60年代には影響力の高かったブルースやロックンロールやロカビリーのギタリスト、60年代と70年代にはポピュラーミュージック史上最も決定的な影響力をもつロッカーやへヴィーメタルのギターヒーローなど、時代を超えてP90の虜となったありとあらゆるエレクトリックプレイヤー達に愛用され、P90は驚くべきほどの高い汎用性を実証してきました。もともとは、ガソリンが1ガロンあたり$0.15で買えたような、当時のスターはFrankie LaineやDuke EllingtonやFrank Sinatraだった頃の時代に開発されたちょっとしたテクノロジーであったのですが。

P-90は1950年代から60年代初期にかけて、市場で一気に真価が認められるようになります。最初のLes Paulモデルや52年から56年に製造された“Goldtop”でP90が標準装備されており、50年代中期から後年の数十年間にわたりLes Paul やSG Juniorや時代時代のスペシャルなモデルにP90が搭載され続けていき、ロック・ブルース・パンクなどジャンルを問わずプレイヤー達に愛用されることになりました。

 

It’s All in the Tone

ポピュラー音楽制作の方法について、その方法論が根本的に変わっているというのに、どうしてP90ピックアップは長きにわたり生きながらえているのでしょうか?答えはシンプルです。P90のサウンドが最高だからです!P90はプレイヤーや聴衆に強烈に訴えかけるような音波の特徴に秀でているのです。レコーディングやライブでのミックス時に、プレイヤーを際立たせる個性的なサウンドキャラクターがあることは言うまでもありません。

P90には、ギターの中の周波数帯域と頃合の良い深さをカヴァーするような絶妙なバランスがとれており、ギターのヴォイスはリッチに響くのです。特に、ミッドレンジの帯域でギターサウンドが息づくときに迫真のトーンとなり、大音量のなかでも抜けるギターサウンドを実現します。一方で、低域については回りすぎず、高域についてはある種耳障りなひっかかるようなトーン(ちょうど他社のより幅の狭いシングルコイル・ピックアップでもみられるようなサウンドの特徴)にならないように設計されています。更に、ギブソン純正のP-90ピックアップのサウンドは、全体で甘くスイートな中にもちょっとした粗さと唸りと粒立ちがあり、それこそが、P90をブルースやロックンロールに最適なピックアップたらしめている所以です。クリーンなアンプにつなげば、豊潤な美しいトーンのなかにも低域がゴロゴロと効いたトーンを楽しめます。よりゲインの強いアンプにつなげれば、ロックの衝動を表現する獰猛な生々しさとともに、怒鳴るような、唸り声をあげるような、そして金切り声をあげるようなギタートーンをもたらします。

 

Under the Cover

P90を覆っているカヴァーは“ソープバー”と“ドッグイヤー”の2種類があります。P90自体は根本的に同じものです。幅の広いコイルは、42-AWGというワイヤー線で約10,000回転分巻かれています。ボビンの下には2個のアルニコのバー状のマグネットがあり、6本の独立したねじ状のスチールのポールピースが貫通しているスチールのバーの両サイドに取り付けられています。その2個のバー状のマグネットより磁気を発生させているのです。P90はシングコイル・ピックアップとして、明瞭さとまとまりのよい高域をもたらしていますが、その幅広な躯体の構造により、他社製の幅の狭い躯体のシングルコイル・ピックアップよりもより大きな磁界を作りだしています。それが、特徴的な温かみのある、分厚いギブソン・トーンを生み出すことに一役買っているのです。

一般的には、シングルコイル・ピックアップはハムバッカーに比べてパワー感に劣ると考えられがちですが、P90は伝統的なハムバッカーに負けず劣らず、ハードにアンプをドライヴさせることができます。P90のもつ1本の幅広なコイルは、PAFのようなハムバッカーの2個のコイルがふたつに分かれているのとおおよそ同じ分量のワイヤーが巻かれています。この2種類の性格の異なる歴史ある大定番のギブソン・ピックアップは、直流抵抗値では7.5kから8.5k ohmsとほぼ同じ数値の範囲を示しています。

 

Gibson’s Current P-90 Equipped Offerings

ギブソン社は、1950年代や60年代製造の最も評価の高いP90と同様のマテリアルと製造法を用いて、現在も変わらずにP90ピックアップの製造を続けています。2018 modelラインアップの人気機種の中でも、P90は標準的に採用され続けています。

Gibson USA製品では、2018 Les Paul Classic2018 Firebird Studioが一対の(2個)のP90を搭載しています。メンフィス工場の製品では、 2018 ES-330 from Gibson Memphisの商品群にて、メンフィス工場にて独自にアレンジの施されたMemphis Historic Spec (MHS) P-90が搭載されています。MHS P90は、50年代60年代のゴールデンエイジのギターの再現を念頭に、ヒストリックな仕様に拘りワイヤーのターン数を若干減少させた内容となっています。カスタム工場においては、ヒストリックな仕様に基づく数モデルにおいて、この特徴的なシングルコイル・ピックアップの採用を続けております。

 

Gibson’s Growling Glory: 70 Years of P-90 Tone