今回はボディのウェイトリリーフ(重量軽減処理)に関するGibson.comによるアーカイヴ記事(2017年2月当時)をお届けします。ギブソンには既にその権利を主張できるほど多くのクラシックなデザインや画期的なイノヴェーションの歴史がありますが、その過去の栄光にただ喜んで頼り切っていこうということでは決してありません。数多のプレイヤーが伝説的なギブソンギターをそれぞれの独創性溢れる手法でプレイしている一方、Gibson USAは、レスポールのような伝統的でアイコン的なモデルでさえ、21世紀を担う未来のギタリスト達の新たなニーズに合わせてよりよく改良する余地があるということを心得ています。更にGibson USAは、未来のギブソンプレイヤーのギブソンギターがそれぞれのプレイヤーにとって最高の1本となるよう、演奏性重視のモデル群のご提供に向け日夜取り組んでいます。
ウルトラ・モダン・ウエイト・リリーフのデザインの出現は、Gibson USA 2017年モデルの魅力をより高めることになる、大きな前進の一歩といえます。ギブソンは、過去数年にわたりボディ重量軽減の技巧に磨きをかけて参りました。そして過去に製造した多くのモデルで既に、この製造技術を巧みに取り入れることでその恩恵を享受してきました。ウルトラ・モダン・ウェイト・リリーフの技巧は次なる段階へと歩を進め、Gibson USAが最適なレゾナンス(響き)とサスティンを持つ様々なタイプのレスポールモデルを製造していくにあたり大きな原動力となっています。理想的で伝統的な往年のレスポールトーンのキャラクターを損なうことなく、より快適な演奏性を実感いただけるような仕上がりとなっています。
絶妙な重量軽減処理
昔々、ステージで12パウンド(5.4キログラム)もの重さのギターをぐいっと持ち上げることは男性らしさの証と見られていました。今日、ほとんどのプレイヤーはそういった苦痛は必要ないことを理解していますし、そのような重量が必ずしもサスティンや重量感のある肉付きの良いサウンドと一致する事はないことも心得ています。ボディの重量軽減は、重いギターを肩から提げる苦痛へのソリューションを提供し、この恩恵を受けるギタリストのうち大多数は、現在Gibson USAで行われている製造技術に非常に好意的なのです。
“心の底から、ボディの重量軽減は適切な措置だと思います” とギブソンのマスタールシアーであるジム・デコラはコメントしこう続けます。“単純に言って適切な措置です。ギブソンの製造側にとってみれば、重量軽減の措置のためにより多くの製造時間と製造工程が課せられるので、製造側の手間が減る訳ではないのです。逆に製造側にとっては製造コストが上昇するはなしなのです。しかし、我々製造チームはこの工程を好意的に行っていますよ”
ウルトラ・モダン・デザインの恩恵
ウルトラ・モダン・ウェイト・リリーフは、Gibson USAが従来行ってきて今も時々行う他のやり方とは異なっています。(詳細は後ほど詳述します) それは、世界で最も価値あるエレクトリックギターの歴史あるサウンドキャラクターを保ちさらに強化しつつ、重量を軽減しようとする衝動から発した究極の改良版なのです。
デコラによると、ウルトラ・モダン・ウェイト・リリーフは、既に成功を収めていたモダン・ウェイト・リリーフの発展形として開発されました。共鳴する性質を妨げることなく更に重量を軽減するため、ギターのボディ外周付近のチェンバーのデザインについて、僅かな違いであっても注意深く計算がし尽くされました。 “モダン・ウェイト・リリーフと同様に” とデコラは語りこう続けました。 “クラシックなレスポール・サウンドを失わないよう、ギターの中心を通じて強固さを提供しようと設計されています。ボディ全範囲にわたりチェンバード加工されたデザインとは異なり、フィードバックやギタートーンや共鳴音への悪影響が起こりづらくなるようデザインされているのです”
この革新的な新たなギター製造技術により、誰が恩恵を受けることになるのでしょうか? 多くのプレイヤー達でしょう。疑いの余地なく。ウルトラ・モダン・ウェイト・リリーフによる大きな利点、取るに足らないほどの欠点を考えれば尚更です。“もともと、往年のクラシックなレスポールのフィーリングやサウンドを求めるプレイヤー達からの助言や反応に応じて設計されたのです” とデコラは語りこう続けます。“加えてより軽量なギターを強く要望しているプレイヤー達ですね。理想的にはライヴ演奏の状況にぴったりでしょうね。特にギターの重さが問題になっている場合などですね”
チェンバード処理が施されたギター
重量負荷を軽減するための手段のひとつには、ギブソンや他の製造メーカーで実践されているように、極限まで徹底されたボディのチェンバード化の方法論があります。大規模なルーティング処理、そしてブリッジやピックアップがマウントされた中心の核となるポイントの両サイドに楕円のチェンバーを施すチェンバード処理は、結果として今までで最軽量のレスポールを生み出すこととなりました。“これは最も劇的な技術です” とデコラは語りこう続けます。“副産物として、よりアコースティックな共鳴音を含むギターに仕上がっています”
状況によっては、こういった類の重量軽減は依然として魅力的です。プレイヤーがセミソリッド・サウンドやセミソリッドの質感を求めている場合などです。その本質は、ES-335のようなセミホローモデルから次の段階へのステップアップを意味します。しかしながら、完全にチェンバード構造になっているギターは、ヴォリュームが高くゲインが高い状況下においてよりフィードバックを起こしやすくなります。そのため、もしプレイヤーがステージでフィードバックに対処できないならば、そのギターは最適とは言い難いのです。
伝統的な重量軽減処理
2017 Les Paul ClassicやLes Paul Tributeなどで使用されてきた伝統的な重量軽減の技術では、メイプル材によるレスポールのトップ板が装着される前にマホガニーボディに9個の円形のくぼみを施す処理が行われています。それらのくぼみはボディ全体にわたり戦略的に位置決めされ、大部分はボディの下部と上部の低音弦側のカーヴの部分に施され、加えてピックアップの高音弦側に一箇所、設けられています。デコラによればこうです。“結果的には、重量軽減処理を施していないギターよりも軽量にギターが仕上がります。しかしながら、それでも変わらずにしっくりとくる重量感はあり、あくまでもソリッドギターとしての質感は損なっていません”
モダン・ウェイト・リリーフ
ウルトラ・モダン・ウェイト・リリーフの前に行われていたモダン・ウェイト・リリーフ処理は2012 Les Paul Standardで採用されていましたが、どんな音量の環境でもフィードバック耐性が発揮できるよう、ボディの剛性を保ちつつ大規模な重量軽減を図るための手法として導入されました。この処理プロセスにおいてギブソンは、マホガニーボディの内側に複数の小型の楕円形のサウンド・チェンバーをルーティング加工により施しています。一方で、ギターサウンドや弦振動にとって重要性の高いピックアップやブリッジ周辺のエリアについては加工を施さずにソリッドのままで仕上げています。
プレイヤーにとってどのタイプがベストでしょうか?
上述してきた処理についてはそれぞれの利点があり、ご支持いただいているファンも大勢います。しかしながらGibson USAは、真実のサウンドに迫る最高の演奏性を実現するに際し、新たなウルトラ・モダン・ウェイト・リリーフの技術は最高の成功例だと考えています。その理由により、Gibson USAは誇りを持って、Les Paul Standard TやHP、Les Paul Studio TやHPなど多くのフラッグシップモデルでこの技術を採用しています。突き詰めていくと、何らかのウェイト・リリーフ(重量軽減)処理がほどこされたギターの製造には、その処理が施されていないギターの製造よりも多くの手間やコストがかかっているのです。ですので、繰り返すようですが、この処理は製造コストを節約する技術ではなく、事実その正反対なのです。そしてジム・デコラがコメントしているように、“この処理は本当に適切”なのです。ギブソンは必ずや、ギブソンプレイヤーがウルトラ・モダン・ウェイト・リリーフ処理の施された最高の2017 Gibson USAモデル群をプレイしてご満足いただけることを確信しております。