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ローズウッドは、ギター製造において長らく使用されてきました。時にうっすらとエキゾチックなグレインが見え隠れする魅力的なダークブラウンの色合いです。ギターのトーンにちょっとした複雑さを付加する点も相俟って、ローズウッド指板のエレクトリックギターをプレイしたことのあるプレイヤーやローズ・サイド・バック仕様のハイエンドのアコースティックギターを経験したことのあるプレイヤーにとってみれば、ローズウッドといえば質の高く伝統的で理想的な材を想起させます。

しかしながら多くの方がご存知のように、最近、他の絶滅の危機に晒されたトーンウッドと同様に、すべてのローズウッド種の取引の制限が強められました。実のところ、これらの強められた制限は、大半のエンドユーザーにとっては少しも悪影響はないのですが、ギターコミュニティを通じて懸念の波紋がひろがりつつあります。ローズウッドや他の制限のリストに上がっているウッドへの新たな規制が、皆様ギブソンプレーヤーに対してどんな影響を与えることになるのか、いっしょに考えてみましょう。

 

Brazilian Gets Company

ヴィンテージギターの売買を経験したことのある方であれば、ブラジリアン・ローズウッド(Dalbergia nigra)は非常に珍重されていて、1960年代後半以降は非常に入手が困難な状況が続いていることはご存知でしょう。仮にヴィンテージギター市場に明るくない方でも、ブラジリアン・ローズウッドの輸出入を統治する厳格な国際取引上の制限があることはご存知でしょう。その制限は、Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (略してCITES)によって制定されています。ほとんどのアメリカのギターメーカーは、1969年に、供給が激減したブラジリアン・ローズウッドの使用をストップしました。ブラジリアン・ローズウッド属へのCITESによる制限は1992年に施行されました。現在、ブラジリアン・ローズウッドは、絶滅に瀕した動植物リストの中で最も規制を要するリスト、“Appendix I”附属書Iに位置づけられています。

しかしながら2016年の9月と10月に、絶滅に瀕した動植物保護を監督するこの国際組織は、Dalbergia属やアフリカン・ローズウッドとして知られるPterocarpus erinaceusを含むすべてのローズウッド種について票決を行いました。2017年の1月2日の時点では、3種のブビンガについて、そこまで急は要さないがそれでも保護を要するとするAppendix II(附属書II)に指定しました。このリスト化が示すところは、CITESのウェブサイト上での情報によれば、Appendix II(附属書II)に属する種は必ずしも即座に絶滅の危機に瀕しているということではないが、将来においてブラジリアン・ローズウッドと並ぶAppendix I(附属書I)に変更せざるを得なくなるような、より厳格な保護が必要となる状況を回避するために、その取引自体を今から監視し規制すべきだという考えに基づいています。

ついでに言うと、私達プレイヤーはこれらのトーンウッドについて、主にギターで使用されていることからその存在を知っているのですが、私達が誤解してはならないことは、この新しいCITESの規制は音楽コミュニティーにぺナルティを与えるという目的で制定されたということではない、ということです。ローズウッドは長きにわたりあらゆるタイプのギター製造において重要な材であったのですが、ローズウッド自体は家具の製造現場でのほうが比較ににならないほど多く消費されており、特に中国で、高級家具用途で高く評価されている材だったのです。中国の近年の経済的繁栄の進行につれて、爆発的にローズウッドの需要と取引きが急増したという背景があるのです。

 

 

What do CITES Restrictions Mean for Me?

 今回の新たな国際的な規制の意味するところは、商業用途で国境を超えて取引されるいかなるローズウッドとブビンガについて、適切な輸出入許可証の添付が義務付けられたということです。ギタリストにとってここでのキーワードは、“commercial use”、商業用途かどうかということです。全体の事情はさらなる説明の必要がありますが、今回のCITESの変更が最初に発表されたときに沸き起こった多くの不安や懸念は、実は根拠の薄いものだったということになります。更にいうと、今回のローズウッドの国際間取引きの取り締まりの強化は、国際的な売り上げを追及するあらゆるギターメーカーがどのようにこの人気あるトーンウッドを使用していくことができるのか、という点に大きな意味合いがあります。

ギタリストにとって真っ先に浮かぶ懸念は、ローズウッドが使われたギターを持って旅行する場合、そのギターは密輸品とみなされてしまわないかということや、今後は特別な書類が必要になってしまうのではないか、ということではないでしょうか。

米国のThe United States Fish and Wildlife Service(略してUSFWS)によれば、ほとんどのプレイヤーにとっては心配するに足らないでしょう、とのことです。USFWSがGibson.comに伝えたところによれば、“贈答用途を含む重さ10 kg以下の非商業用途のアイテム、旅行中の個人の手荷物としてや世帯の引越しの荷物の一部として運ばれる販売を目的にしないアイテム、個人所有のアイテムでその個人に向けて輸送されるアイテムなど”、本規制の適用除外となっています。明らかに、これらの規制適用除外事項は、一般的なユーザーが旅行する時に携行するギターの場合にもあてはまります。この規制適用除外事項にあてはまらないギターは、“国際間の取引きのケースではCITES書類の添付が不可欠となります”ご注意いただきたい点は、これらの制限は、当該アイテムが国境を越えて輸出入される場合にのみ関係してくるということです。例えば、米国内での輸送やEU域内での輸送時には、CITESによる証明書は必要ではありません。

もし、皆様がツアー中のギタリストであったり、個人の娯楽のためにギターを携行して旅行している場合、明らかによい知らせだと思います。皆様がプライヴェートな使用を前提としてギターを携行しているのであれば、税関職員にギターを没収されてしまう恐れはほとんどありません。

一方、もし皆様のギターがブラジリアン・ローズウッドを使用したギターである場合、国境を越えて持ち運ぶためには正式の書類が必要となります。2013年に、CITESの関係者が“instrument passport”、楽器用パスポートのようなアイデアを考え出しました。それは、1975年以前に製造されたブラジリアン・ローズウッド搭載の楽器を携えて複数国の国境の出入りの際に使用するというアイデアでした。これらの申し込みフォームや詳細は USFWS web siteでの該当ページにてご確認いただけます。また、そのページでは一度だけの越境や輸出入時用の申し込み書もご確認いただけます。

 

 

Rosewood in Guitars for Commercial Export

ローズウッド在庫の輸入の制限とローズウッドのパーツを使用して製造されたギターの輸出の間で、今回の新たなCITESによる制限は、ギターの取引のほうにより大きな影響をもたらしています。どのギター製造業者も、ギターディーラーも、予め所有しているギターを再販売する業者も、国境を越えてのビジネスとなる場合、指定された証明書類について理解している必要があります。

もし皆様が米国外へ、ギターを私的販売目的で輸出しようと考えている場合、The U.S. Fish and Wildlife ServiceにCITESの証明書を申し込み、1アイテムあたり$100の費用を支払い、60日から90日以内の間に、そのギターが国境を越えるのに必要となる証明書を受け取ることになります。多くの国際間取引をしようと考えているギターのディーラーや個人の販売業者の場合、包括的な3年有効の認定書を$200で、個別のギターの出荷ごとに追加分として$5で購入できます。しかしながら、この輸出証明書に加えて、国によっては輸入証明書も必要となりますので、販売業者は国ごとに異なる規則をリサーチする必要があるでしょう。

但し大方のケースについては、標準的な種のローズウッドなのであれば、CITESの制限は通常のギタリストにとっては重大な悪影響とはならないでしょう。もし皆様が海外のユーザーにギターを販売しようと考える場合、The USFWSからの必要事項や正式な書式に注意を払う必要があります。但し、皆様が純粋に私的な使用のためにギターを携行されている場合、なにひとつとして問題となることはないでしょう。